この物語は城陽でのワイナリー設立という一大プロジェクトを自ら手がける松本真氏を記者が追い、記者の主観で描いていく現在進行中のストーリーである。
生まれ故郷、城陽を愛する松本真氏のワイナリープロジェクトが始動したのは4年前。シェフでありソムリエ資格を持つ彼は多種多彩なワインと出会う中で日本のワインに惹かれ、さらに学びたいと心震わせ全国のワイナリーを回っていた。そんな中、大阪・南河内のワイナリーに併設されたレストランで河内ワインに合う料理を提供する仕事を任される。
南河内に通い始めたある時、ふとある事に気付いた。南河内ではブドウは勿論、いちじくや梅を含めた果物、野菜などが多く栽培されている。全国的にも有数のブドウの産地であるその地域と彼の地元、城陽は気候や風土が似ているに違いない。ならば城陽でもワイン用のブドウを栽培する事ができるのではないか?
行動に移すまでに時間はかからなかった。さっそく試験的に20本の苗を植えると記者を集めて記者会見を開いた。その20本は結実しなかったものの、彼の挑戦は新聞記事となり多くの人目に触れた。そうする事で自分を追い込みプロジェクトを続行する動力にしたのである。
そして歯車が回り出す。
農家の方に相談すると彼の熱意が伝わり、何と土地を借りる事が出来た。その土地を友人が整備してくれ、さらにはぜひ協力したいと敷島住宅が200本の苗木を寄贈。こうしてブドウ畑「ヴィニェート青谷」が誕生した。上手い具合に歯車を回していたのは周囲の人々なのだが、これは輪の中心にいる松本氏の人徳のなせる技であった。プロジェクトを通して「皆が自分ごとになったら面白い。」と語る彼は、自分だけでなく地域の人々とともに喜びを分かち合い地域全体を盛り上げていきたいという熱意に溢れている。
ブドウと格闘する日々が続き、2年目となった2017年に無事初収穫、60本のワインを作ることに成功した。出来上がったワインを飲んだ人達は目を丸くした。「すごく美味しい!」「このまちでこれが出来たの?」その言葉が何より嬉しい。綺麗で自然な香り。自分でも意外なほど良い感じにまとまったと思う。だがまだやる事は残されている、そう感じていた。
まちには素晴らしい農家や店がたくさんある。その事を熟知している松本氏にとって、「食」という地域の特色を活かさない手は無い。自身が手がけるワインは勿論、食を通して様々な方法で地域内部から活性化させていきたい。それこそが彼の考える、土地に根付く「本当の豊かさ」である。そんな熱い思いを持って、彼は土地や出資者を探しながらワイン作りを続ける。
このプロジェクトでの最終的な目標は「城陽ワイナリー」の設立である。醸造所の横にはレストラン、畑、農産物などを販売する地域のマーケット。願わくば宿泊施設も併設したいー。農商工の連携で地域の素晴らしさを発信する拠点を作る、そう語る彼の目は力強い。当初の計画で10年後、つまりあと6年である。
【蔓の城】城陽ワイナリー計画
- 2014 プロジェクト始動~2017
- 2018 収穫~醸造
- 2018 秋
- 2019 春~6月
- 2019 9月~収穫
- 2019 選果・醸造~11月
- 2020 2月~梅雨
- 2020 7月~2021 春