【蔓の城】城陽ワイナリー計画 2020 2月~梅雨〈実話〉

この物語は城陽でのワイナリー設立という一大プロジェクトを自ら手がける松本真氏を記者が追い、記者の主観で描いていく現在進行中のストーリーである。

城陽ワインの画像1

2020年2月、剪定作業。垣根を高くするため下の枝を切り落としていく。地面付近の通気性を上げる事で病害を防ぐ事に繋がる。2年前に瀬戸氏の助言を受けて、より一層風通しに気を遣う様になり畑の衛生面が向上していた。

農薬を使用せず、病害も出さない。その両立が難しい事は痛い程分かっていた。

自分はただ農薬を使わない事に拘っているだけでは無いのか?しかし、そうで無いなら自分の理想を諦めるのが正解だと言うのか…。

そんなジレンマに悩まされながらも、しかしやれる事はやらねばと考えている。そんな彼の意思を受け、妻が畑での作業を主に担ってくれていた。

城陽ワインの画像2

実はこの畑で収穫出来るのは来年までとなる。まちの開発に伴いこの土地を借り続ける事が難しくなったのだ。現在手を掛けている木は新しい畑へ移す事となるが、一年目で実る保証は無い。新たな木も植える予定だが、結実するには三年程かかるだろう。そして何より新たな畑が決まっていない。危機的状況だ。しかし、それでも松本氏の意思は揺るがなかった。

必ず城陽にワイナリーを造る。

大きな不安と重圧感を抱えながらも、このプロジェクトは続けていく価値がある、そう感じていた。ワインが仕上がるのを年に一度のイベントの様に楽しんでくれる人達。日頃からこのプロジェクトを通して自分を支えてくれている人達。先斗町のレストランでも彼のワインを口にしたお客が、更にもう一杯と注文してくれる事もあるという。そんな数々の喜び、感謝、責任感が彼を奮起させる。

スクラップ・アンド・ビルド。土地を手放すのは或いはチャンスかもしれない。追い詰められ、退路を断たれた局面でこそ出せる功科がきっと有る。ここで終わらない、終わりたくない。自らの意思の力を信じた。

城陽ワインの画像3

4月、芽かきの作業。余分な芽を摘み取っていく。太陽を浴びた畑は宝石を散りばめた様にキラキラと輝き、春の息吹が始まりの一頁をふわりと捲り舞い上がる。生彩を放つブドウを眺め、清々しさに深呼吸をした。この季節の畑が好きだ。

最近考えている事がある。働き方の事、コミュニティーの重要性。長期的、抜本的な構想。その一環としてワイナリーでも一緒に働く仲間を広く集めたい。主婦、シルバー、障がい者の方など…柔軟な体制で多くの人が働きながら幸せになる、それがもう一つのワイナリー完成図だ。

城陽ワインの画像4

5月、今年最初のボルドー散布。そして剪定作業。今年は樹勢が強すぎる為いかにコントロールするか、どれだけ除葉出来るかが重要になってくる。

瀬戸氏によると、腐敗を防ぐ為、房も更に落とさなければならないとの事だった。思い切り落としたい。しかし2年前と同様に、もし長雨等の影響で今後果実が腐敗すれば更に多くの房を落とす事になってしまう。それでも今、落とさなければならない。先が予測出来ない中での決断。自然を相手にする、というのはこういう事なのだ。

城陽ワインの画像5

6月10日、城陽も梅雨入りとなった。雨や湿気の多い梅雨の季節はブドウの大敵だ。病害は避けたい。しかし現在とっている対策はボルドー液のみ。今夏はどう出るか―。

ブドウはその後も成長を続けた。

(写真は松本氏提供)

 

【蔓の城】城陽ワイナリー計画 

  1. 2014 プロジェクト始動~2017
  2. 2018 収穫~醸造
  3. 2018 秋
  4. 2019 春~6月
  5. 2019 9月~収穫
  6. 2019 選果・醸造~11月
  7. 2020 2月~梅雨