【蔓の城】城陽ワイナリー計画 2018 秋〈実話〉

この物語は城陽でのワイナリー設立という一大プロジェクトを自ら手がける松本真氏を記者が追い、記者の主観で描いていく現在進行中のストーリーである。

2018年9月下旬、松本氏は新潟市「CAVE D’OCCI / カーブドッチ」を訪れていた。此処はブドウ畑、醸造所、レストラン、カフェ、ワインや雑貨、食品等を販売するマーケットなどが集まる広大な複合施設で、人々はワインや料理を愉しみ優雅なひと時を過ごす。この様な場所を生まれ故郷 城陽につくるのが松本氏の目指すところである。

隣接のワイナリー「Cantina Zio Setto / カンティーナ・ジーオセット」を訪ねると、オーナーの瀬戸氏が笑顔で迎えてくれた。ワイン造りの先輩である瀬戸氏にネッビオーロ(赤ワイン用ブドウ品種)のワイン造りを手伝わせてもらう。スパークリングや赤ワインの製造も視野に入れている松本氏にとって貴重な体験だ。

一段落ついたところで瀬戸氏に畑の状態を写真で見てもらう。今夏は類を見ない豪雨の影響でブドウがべト病にやられてしまった。改善点があれば実行したい。

瀬戸氏は写真を見るなり、畑に湿度がこもりやすいのでは、と指摘した。何か工夫して風通しを良くする事で畑の状態が改善されるのではないか。その事を踏まえ、樹勢をコントロールするという結論に至った。放っておけばどんどん伸びるブドウに、今後は少し手を加えてやる事にする。

ブドウ造りは決して一筋縄でいくものでは無い。自然条件に大きく左右され、時には日々の努力がふいになる事もある。せめて除草剤や化学肥料を使えば少しは楽が出来るだろう。しかしできるだけ自然に、と松本氏は考えている。何故か?

それは土地の味、つまりテロワール(風土、生育環境)を表現する事を重んじるからである。長所はもちろん、ネガティブな要素も全部ひっくるめて出来るだけ自然に表現したい。シャルドネという品種を最初に選んだのもテロワールを反映しやすいという理由からだった。

 10月中旬、今年のワインが出来上がったと一報が入った。早速「和歌山ワイナリー」に出向く。

瓶詰め前のワインを飲んでみるとストレートでフレッシュ、そして若干スパイスを感じる仕上がりになっていた。旨味、複雑な要素、様々なミネラルも感じられて味わい深い。糖度が上がると酸が抜けやすいのだが、かなり高めの糖度でありながら酸もしっかりと残り、どこか林檎酒を思わせる風味。「城陽の味」をストレートに表現出来たと自信に繋がった瞬間だ。

半月後、いよいよ瓶詰めされたワインが「THE MATSUMOTO KITCHEN」に届いた。新酒を一番に飲んでもらうのは父、保弘氏。

思えばワイン造りを始めた頃、周囲から「こんな場所では無理だ」「前例がない」などと言われた中で、父は我が息子のためならと農業経験を活かして手伝い、大変な草刈り作業など重要な役割を担ってくれた。そんな保弘氏が病で倒れたのは数ヶ月前の事だった。入院中もこちらの心配をよそに畑の事ばかりを考えていたのは、彼の中で何時しかこのワイン造りが大きな部分を占めていたという事だろう。

グラスに注ぐと、見た目もクリアで綺麗な色をしていた。乾杯し、口に含んでゆっくりと味わう。前年よりもボリューム感が増し、一層ワインらしく感じた。最初は真剣に吟味していた保弘氏もいつの間にか口元に笑みを浮かべている。息子の料理とワインを合わせて愉しむこの上ない悦び。この先も息子の夢を共に追い続けたいと願っている。だが一方で、先が長くない事も分かっていた。

 

【蔓の城】城陽ワイナリー計画 

  1.  2014 プロジェクト始動~2017
  2.  2018 収穫~醸造
  3.  2018 秋
  4.  2019 春~6月

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