【蔓の城】城陽ワイナリー計画 2019 選果・醸造~11月〈実話〉

この物語は城陽でのワイナリー設立という一大プロジェクトを自ら手がける松本真氏を記者が追い、記者の主観で描いていく現在進行中のストーリーである。

収量が多い分、選果作業は想像以上に大変だった。腐った実も多く、それらを取り除かないと発酵途中で余計な菌が増殖し腐敗につながる可能性がある。皆に手伝ってもらい、何時間も作業を続けた。

気付けば夕方になっていた。雨が降り出し、薄暗い空に雷鳴が轟く。爪には黒色の染みがこびり付いていた。今日は朝の暗いうちから畑に出ていたが、ようやく全工程の半分といったところか。かなり体力を消耗する一日になりそうだ。

辺りが暗くなり手元を見る事さえ難しくなってきた頃、ようやく目処が付いた。ここで一度ワイナリーに移動する。

今回お世話になるのは大阪府柏原市の「天使の羽ワイナリー」、旧「ひめひこワイナリー」だ。到着予定の時刻が遅れてしまい心苦しいが、有り難い事に夜遅くまで開けて下さるという。

現地に到着すると、ワイナリーの天羽氏が柔和な笑顔で出迎えて下さった。ブドウを運び込むやいなや、ブドウを機械にかけて実と枝に振り分けて下さる。葡萄の画像

次に行うのはバスケットプレス。実を木の樽に入れ万力を用いて上から圧力を掛け、果汁を搾り出す。

この工程を繰り返す間に残りの選果作業も行わなければならない。実全体の重さを計ってみると想定の2倍、約600kgにもなっていた。

途中、果汁を飲んでみた。酸がピリッと立ってフレッシュで、どことなく青林檎酒を思わせる風味。隣りで作業を手伝ってくれている妻も「林檎酒みたい」と微笑んでいた。

今年は妻にとって、一年を通してワイン造りを経験した初めての年になった。孤独で大変な作業も多い中、自分なりに楽しみを見付けてやってくれている様だった。

作業は深夜2時頃まで続いた。ワインの撹拌を繰り返し、フィルターに掛け、最後に酵母を入れて発酵を促す。今年は樽を使わず全て瓶詰めにし、半分はスパークリングにする事にした。

最近考えている事がある。ワイン造りに費やす時間は殆どが畑での作業だ。とは言え、その最終工程を醸造所に任せていて良いのだろうか?自分の醸造所を持ち、最後まで自分の手で行うべきではないか?

そういった思いから、現在醸造所の設立に向けて動き始めているところだ。実現すれば様々なアプローチからやりたい事を自由に試す事も出来るだろう。

10月16日、ワインが仕上がった。親父と作った最後のワインだ。一つひとつ瓶詰めしていく。スティル、スパークリングが200本ずつ。多くの人に楽しんでもらえるのが嬉しい。

口にするとグレープフルーツやレモンを思わせる香りがした。昨年と比べるとボリューム感はダウンしているが、これも想定の範囲内だ。昨年と今年の異なる結果を比較する中で、次の方向性を決めていく。

それにしても、最終的に「どんなワインでも素晴らしい」と思えた事は一つの収穫だったと言える。どの様なテイストに仕上がっても、それがその年の、この愛すべき土地の個性であり、それこそが地元でやっている意味なのだ。

有り難い事に飲食店をしている仲間達がそれぞれの店にワインを置いてくれる事になった。熱い思いが込み上げる。こういった形で地元のワインを人々に楽しんでもらえる事が、本当に嬉しかった。

そして現在、さらに多くの人にワインを届けるため酒販免許を取得するつもりでいる。一歩一歩、必要な事をクリアしていく。最初は遠い夢だった未来が具体性を帯び、少しずつ確実に近付いて来ている。疲れた体で扉を開けると一陣のつむじ風が前髪をさらっていった。

【蔓の城】城陽ワイナリー計画 

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