【特集】茶どころ山城地域で特に注目すべき「鉄ミネラル野菜」って?野中鉄也先生の研究と発見、壮大な今後の展望も!

みなさん、「鉄ミネラル野菜」をご存知でしょうか?お野菜の栽培過程でお茶を使用するのですが、そうすると驚くほど良質なお野菜になるんです!この画期的な発見をされたのが、京都大学大学院の野中鉄也先生。今回の取材では、とても興味深いお話をうかがう事ができました。

驚くべき「鉄ミネラル野菜」の誕生秘話

ー野中先生は工学研究科の先生でいらっしゃいますが、「鉄ミネラル野菜」の栽培方法を発見された経緯を教えていただけますか。

「当時私は、機械用の油を開発中でした。機械は摩擦によって擦り減りますが、その磨耗の実験をしていました。トライボロジー(摩擦、潤滑などを対象にした科学技術)の分野では、温度が高くなるにつれてどんどん条件が悪くなると考えられます。」

ー確かに、高温になればなるほど機械が磨耗しそうな気がしますね。

「ところが私が30~350度くらいの間で実験していて気付いたのは、100度あたりで大きな変化が現われる、という事でした。」

ーどうして結果に違いが生じたのでしょうか。

「私の実験では混じり気のないピュアな油ではなく、不純物を含む工業用の油を使用していたんです。」

ー不純物がポイントだったんですね。

「そうなんです。サビの影響で酸化膜ができるのですが、約100度を下回ると赤サビに、上回ると黒サビになります。これは油の中に水が含まれているかどうか、という違いなんですよ。鉄は水に濡れると赤サビが出ますが、バーナーなどで高温の火にさらすと黒くなりますよね。」

ーなるほど。鉄の赤サビや黒くなった鉄を日常でも目にする事がありますが、色の違いは水の有無だったんですね。

「そして次に行ったのが、100度以下でも赤サビを黒サビに変える方法の研究です。」

ーその方法を見つけようという発想からしてすごいです。ところで赤サビより黒サビの方が良いのですか?

「赤サビはポロポロと剥がれますが、あれはもろいんですね。黒サビは構造が強く機械の摩擦にも強いんです。」

ーなるほど。分かりやすいです。

「調べていくうちに、タンニン(ポリフェノール)が赤サビを黒サビに変える力を持っている事が分かりました。」

ータンニンが!

「そうなんです。そこでタンニンを多く含む一番身近な物の1つ、緑茶に注目しました。試しに油に混ぜて鉄との反応を見てみると、低い温度でも黒サビになる事が分かりました。」

ーすごい発見ですね。

「お茶の入った紙コップに鉄くぎを入れると5分程で黒いモヤモヤが出てきますよ。最初この実験を行った時は鉄の表面に膜が出来る事を期待していたのですが、実際は膜にはならず溶け出してきました。これは実験としては失敗なんです。ところがちょうどその頃に考えていた事がヒントになって、この実験結果がまた新たな発見につながりました。」

ーと、言いますと。

「その頃アメリカ先住民のメディスンマンと呼ばれる方々について調べていたんです。彼らは、地球は様々な物が循環している1つの生命体だという捉え方をしています。ちょうどそういった事が頭にあったので、『どうして黒いモヤモヤが出てきたのか?』と考えた時に『ミネラルを世界に循環させるために自然が作り出した反応なのでは?』という考えが浮かびました。」

ーミネラルを世界に循環させるため、ですか。

「鉄は一番大切なミネラルの1つで、生き物にとってとても大切なものです。生命の誕生も、温度の高い鉱泉の様なものから鉄や硫黄を持った生物が生まれたと考えられます。光合成にも鉄は必要なんですよ。」

ーそんなに大切なものなんですね。

「ミネラルは森、川、海を循環しているのですが、近年はその循環が滞っている場所が増え、それが環境や生物に悪影響を及ぼしていると考えられます。もしかすると畑にもうまく循環していないのではないかと思い、好奇心から鉄をお茶に溶かして畑に与えてみました。それが『鉄ミネラル野菜』の始まりです。」

ーなるほど。とても壮大なお話ですね。機械用の油から地球環境のお話まで、全部が組み合わさり誕生したのが「鉄ミネラル野菜」だったんですね。今回は色々とお話をしていただき、ありがとうございました。大変ためになる、また興味深いお話でした。

今回野中先生にお話をうかがって、「鉄ミネラル野菜」の栽培方法は野中先生でなければ発見できなかったかもしれない、と思いました。機械用の油の開発、タンニンの働きの発見、お茶を使った実験、さらにミネラルの循環という地球規模のお話に、最後は先生の好奇心が加わって発見された奇跡の栽培方法。野中先生の偉大さと「鉄ミネラル野菜」のありがたみを感じました。

 

「鉄ミネラル野菜」ってどんな味?

野中先生の研究により、お茶と鉄を合わせて畑に与えると良質な野菜が育つ事が発見されました。こうして誕生した「鉄ミネラル野菜」ですが、栽培に使用されるのはお茶の製造過程で出る茶葉です。機械に詰まった茶葉や、枝が付いているなどの理由でラインから外されたものなど、本来なら廃棄されてしまう茶葉を活用するということ。無駄がなくとても画期的な方法ですね。

さて、「鉄ミネラル野菜」と聞くと栄養価が高そうなイメージですが、気になるのはその味。一体どんな味なのでしょうか?実際にいただいてみました。

まず見た目は緑色、赤色、紫色など、それぞれのお野菜の色が濃くとてもはっきりしている様に感じます。かぶらやとうがらしなどは表面にツヤ感があります。

手に持ってみると、かぶらなどはずっしりとしていて、葉物野菜は葉が分厚くしっかりしています。

そして驚くのが、多くのお野菜が生で食べられるという事!葉物野菜はもちろん、固そうなかぶらや、何と辛そうな唐辛子まで!色々生で食べてみました。

春菊やゴボウ、かぶらのくきの部分などはとても香り高く、噛むごとに上品でとても贅沢な風味が広がりました。ごぼうはアク抜きをしなくても調理OKとのこと。切ってから時間をあけて食べてみても、色もあまり変わっておらず、味も嫌な感じは全くしませんでした。かぶらは固すぎず食感も良くてとても美味しかったです。梨を思わせるほのかな甘みがありました。万願寺とうがらしは種ごとかじっても辛くなく、こちらもフルーティな甘みがありました。

感想をまとめると、「野菜本来の味や香りをとてもしっかりと感じられる」、「苦味、辛味、アクは抑えられ、野菜の甘みを感じられる」。食感は「水分量が多くてみずみずしい」、「葉物野菜やかぶらのくきの部分などはシャキッとしていてフレッシュ感が強い」、「ごぼうやかぶらなどは生でも食べられる柔らかさ」。

どれを食べても味、食感、香りの良さに驚かされました。これなら子供たちも野菜が大好きになるのではないでしょうか。ちなみに、お茶の味はしませんでした。

また、包丁を入れるとスッと入るのも印象的です。野中先生によると、これは空気の入ったタイヤの様に細胞1つひとつに水分がパンパンに入っているためだそうです。火の通りも良くなるそうですよ。切った断面は少し時間が経ってもみずみずしさが残っていました。

さらに、酸素不足の田んぼに緑茶と鉄を合わせて入れておくと、光合成が活発になり田んぼが藻や水草で緑色になってくるそうです。藻や水草が太陽を遮るため雑草も生えにくくなります。そのお米を炊いていただいてみると、香りも良く、おかずの要らない美味しさでした。良い事ばかりですね。

 

「鉄ミネラル野菜」と似た原理に目からうろこ!

野中先生によると、似たような反応は昔から色んなところで利用されていて、伝統的なものや身近なところにも沢山見られるそうです。おそらく計算した上で利用されているのではないと思いますが、理にかなっていると言えますね。

例えば昔ながらの染物もそうです。泥を使って糸を黒っぽい色に染め上げる大島紬の色は、お茶に鉄くぎを入れた時と同じ様な色だそうです。

食べ物では、例えばきゃらぶきの黒っぽい色を作り出すのも同様の原理だそう。トマトソースは鉄のフライパンで調理すると味が良くなるという事です。

それから茶粥。「どういうわけか普通のお鍋で作ると余るのに、鉄鍋で作ると美味しくてすぐになくなってしまう」というお話を先生ご自身も聞かれた事があるそうです。また、茶道で使われている鉄の茶釜や鉄瓶も抹茶の味をまろやかにするとのこと。面白いですね。

そして今回、コーヒーとはちみつを使った簡単な実験をさせていただきました。身をもって体験すると本当に驚きます。

まずはコーヒーをブラックで飲んでみます。苦味を感じる様に少し濃い目に作ってみました。次に(甘みを感じない程度の)ほんの少しのハチミツをコーヒーに加えます。飲んでみると、味がとてもまろやかになっていて苦味はほとんど感じませんでした。あまりの変化に何かのマジックかと思うくらい不思議な気分になりましたよ。

 

野中先生の今後の展望は?

「鉄ミネラル野菜」はそのあまりの美味しさと環境への配慮などから主婦層などの熱い支持を受けて大人気。販路はすでにほぼ決まっているそうです。

野中先生が現在考えておられるのは、和束町の住民の方々がアンバサダーとして町全体で「鉄ミネラル野菜」の活動を盛り上げていける仕組みづくり。

町のさらなる活性化にもなり、ミネラルを循環させる事で環境の改善につながり、お茶の製造工程で出る廃棄物を活用し、子供たちの食育にもなる、いいことづくめの活動をされているんですね。

先生の活動はすでに滋賀県にも広まっており、兵庫県、三重県などにも広まりつつあります。野菜関連、健康改善、漁業関連という切り口から今後もさらに広めていき、あらゆる場所にミネラルを循環させる事で、何と最終的には地球再生を実現するのが目標だという事です。

今回の取材では「鉄ミネラル野菜」を通して見えた大きな可能性に驚かされましたが、それと同時に山城地域の住民としてお茶の産地ならではの様々な可能性も感じました。和束町や山城地域にとって、非常にありがたく意味のあるお話。今後、一体どの様な形で、どの様な人達を巻き込んで、どの様にして広がっていくのでしょうか。地域レベルで、世界レベルで、地球規模で…色々な可能性を考えると取材中もワクワクと胸が高鳴るのを抑えられませんでした。

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