Design Week Kyoto から異業種コラボで新製品が誕生!「見える」春日厨子【宇治市・京都市】

昨年12月にお披露目された「分解できるコントラバス」に引き続き、またまた Design Week Kyotoから異業種コラボで新製品が誕生しました!今回は文字が「見える」春日厨子です。春日厨子お披露目の画像

 

Design Week Kyoto
「多様な交流を通じて京都をリデザインし、よりクリエイティブな街へ」というビジョンを掲げ、2016年から一般社団法人 Design Week Kyoto 実行委員会が実施。普段はクローズしているモノづくりの現場をオープンにする事で、普段交わる機会のない人々の交流が生まれ、これまでにない着想の製品が誕生するなどしている。

今回製品開発を行ったのは、漆塗りの高い技術を持つ有限会社Nao漆工房(京都府京都市)と、「ナンゴ―彫り」で特許を取得している株式会社ナンゴ―(京都府宇治市)。

春日厨子の画像

「ナンゴ―彫り」とは、「ステレオグラム」(目の焦点をずらして眺めると文字や絵などが立体的に浮かび上がって見える絵や写真)の技術を金属加工等に応用した、株式会社ナンゴ―の独自技術です。

御厨子の内部正面をぼんやりと眺めると…空海の「空」の文字が現れます!

株式会社ナンゴ―では、わずか1ミリの中に100の単位があるほど微細な製作を行っておられます。今回の様にプレートのサイズ感や縦方向の形状に合わせ、これほどの精度で金属に表現するのは非常に難易度が高いという事です。

「空」の文字が浮かび上がる春日厨子の画像

そして漆塗りにおいても、かなり高度な技術が必要になってきます。

通常の御厨子はヒノキや松といった木材に漆を塗るそうですが、今回使用された素材は表面が滑らかで漆を定着させるのが難しいアルミニウム。

密着性を高めるプライマーを塗布したりサンドペーパーで表面にキズを付けるなどして漆の剥離を防ぎ定着させたという事です。プライマーは濃度の調整が非常に難しく、気温などにも左右されるため試行錯誤を繰り返されたそう。

さらに、アルミニウムは漆塗りにおいて重要な要素の一つである温度管理が難しいため調整が必要になってきます。また、木材を使用した部分と同じ見た目に仕上げるのも大変なこと。

こういった事すべてが豊富な経験、知識、技術によって解決され、新たな可能性が導き出されました。

小畑氏と南郷氏の画像
有限会社Nao漆工房 小畑 直樹氏(左)/株式会社ナンゴ― 南郷 真氏(右)

有限会社Nao漆工房 代表取締役の小畑 直樹氏は、今回誕生した御厨子について株式会社ナンゴ―の技術力を讃えるとともに、「金属のプレートは木材よりも角が立つため良い仕上がりになった」とお話されました。また、「京仏具においても伝統を守りつつ新たな試みをしていく事が大事」だと述べられました。

株式会社ナンゴ― 代表取締役の南郷 真氏は、「工芸品の極みと言われる京仏具とのコラボレーションが実現した」と喜びを表されました。同社担当者の奥野 英子氏は、「若い世代が伝統工芸品への関心を失ってきている中、後世に残していくために今ある技術を伝統と結び付ける事も時には必要」などとお話されました。

カラー漆の画像今回誕生した御厨子は好きな文字(字数制限あり)を入れられるオリジナルのデザインで、受注生産の形で販売されます。色はシルバーの部分を朱色や青といったカラー漆で仕上げる事も可能だそう。

今回の異業種連携について一般社団法人 Design Week Kyoto 実行委員会 代表理事の北林 功氏は、「この様に結実した姿が見られて感動している」と述べられました。加えて、Design Week Kyoto での取り組みには「モノづくりの現場をオープンするとともに人々の視野も広げる」意味合いがある事や、今回の様にコロナ禍においてもオンラインで出会いが生まれる事などをお話されました。現在は常識の領域を超えた「突然変異」を起こすべく、「変異する京都」のタイトルを打ち出し来年2月に向けて活動されています。

今回誕生した製品を見てみたいという方は、今月行われる展示会に足を運んでみてはいかがでしょうか。8月18日(水)・19日(木)、東本願寺別邸の渉成園(枳殻邸)で開催予定となっています。