今回訪れたのは「宇治市源氏物語ミュージアム」(京都府宇治市宇治東内)!物語の世界に迷い込んだような非日常体験をしてきましたよ~!
(記事の内容は2024年3月6日時点のものです。)
建物の形も雅やかなこちらの施設。
中へ入ると…
「わあ~っ!」
天井が高くて広い空間は、もうそれだけで楽しい気分になってきます。
それに、カラフルで目を引く展示の数々!
気になる物がありすぎる!
「あれは何?」「これも気になる!」と色んな展示に興味を掻き立てられて、心が弾む楽しい時間。
季節によって変わる内容もありましたよ~。
そんなこちらのミュージアム。
『源氏物語』や平安時代の文化に興味のある方はもちろん…
映像や音声とともに物語の魅力やあらすじを知ることができるので、『源氏物語』を読んだことがない人も楽しめます!
こちらは光源氏が女君たちと暮らした六条院。
「物語の世界がここに!」とワクワクが止まりません。
ところで…
せっかく『源氏物語』の世界に触れるなら、できるだけ想像を膨らませた方が楽しいですよね!
宇治市源氏物語ミュージアム学芸員の坪内さんにお話をうかがったところ、楽しい気付きがいっぱいありました!
たとえばこちらの牛車と…(車輪大っきい!)
こちらの牛車(小さくてかわいい~)を見比べてみると…
六条院の広大さが分かりやすい!
(すぐ近くにあるので、行かれた方はぜひ見比べてみて下さいね!)
「これだけ広ければ維持するのも大変ですよね」と坪内さん。
牛車があるってことは、牛さんたちの餌やお世話も必要です。
それに、お庭で舟遊びができたり…
細長く伸びた馬場(下の写真では右側の部分)まであって、競馬(くらべうま)が行われたということです!
それから四町を回ろうとすると、広すぎてとっても時間がかかりそう!(嬉しい悩み?)
しかも当時は服装もちがうし、歩いていくのもまた大変。
ちなみに明石の君(受領階級の生まれ)が暮らしていた「冬の町」(北西の場所)は、少し雰囲気の違う造りになっています。
御倉町(みくらまち)もありますよ!(光源氏の財産を納める倉が、所せましと立ち並んでます。)
ところでこちらの六条院にも渡殿(建物と建物をつなぐ廊下)や透渡殿(両側の壁がない渡殿)がありますが、紫式部は渡殿の一画に部屋を与えられて、相部屋のようにして暮らしていたそうですよ!
そう考えるだけでもイメージが変わりますね~。
それから…
建物の構造は普段の暮らしぶりや心の持ちようにまで影響する、というのがまた面白いところです!
見えないものを大切にしたり、空気や行間を読むような感覚や文化は「今の日本にも残ってる!」なんて嬉しくなったり。
どういうことかと言うと…
まず、お部屋の外には簀子(すのこ)と呼ばれる空間が廊下のように伸びています。
御簾(みす)の内側には廂(ひさし)の間(上の写真では女君たちが囲碁をしています)があって、さらにその内側には母屋があるみたい!
中の人と距離があれば簀子(すのこ)で対面することになり、少し仲良くなると廂(ひさし)の間に入れてもらえて御簾(みす)越しに話せるようになりますが(やった~!)、それでも初めは「姿が見えないように」と外側の方にいるそうです。(みずから遠慮~。)
それから…
宇治市観光振興課の鈴尾さんに教えていただいたのですが、廂(ひさし)の間では女性が御簾(みす)の下から美しい色合いに重ねた着物のすそを少し出して、外にいる男性にセンスの良さを感じさせて気を引く、というようなこともしていたそうですよ!
日本人の美意識も感じるな~!
そして…
「誰かが知らないフリをしてくれているのを、そこはかとなく感じ取った時に『あ~、この人は良い人だなあ』と思うもの」「それが粋」だと坪内さん。
現代では壁があるような所にも御簾(みす)や几帳が置かれているだけ、という空間が多いですが、「その向こう側の会話が聞こえてしまっても聞こえないフリをする」なんて心配りの文化もあったのだそう。
平安時代の文化を学ぶと、現代の人間関係や恋愛にも活かせるかも!?
そして当時の恋愛でも衝撃的なものと言えば…
垣間見!
平安時代の貴族の女性は、基本的には男性に顔を見られないようにして暮らしていたそうです。
そんな中、御簾(みす)や垣根の向こう側にいる女性を男性が偶然垣間見て、恋が始まることがあったみたい!
現代では男女は互いに顔を見ることができますが、当時はそうではない…
改めて考えるとすごい時代ですよね!
それだけに、美しい姫君の姿を目にした時のインパクトを想像してみると…
「どれほど恋心が燃え上がったことか!」「姫君のお顔が忘れられずに夜も眠れなかったのでは?」なんて頬を赤らめてしまいます。
坪内さんによると、垣間見の場面を物語に取り入れることで「これから何かが起こりそう!」という予感を読者に与える効果もあったそうです。
『源氏物語』の宇治十帖(『源氏物語』最後の十巻)では、一番最初の『橋姫』に出てきます。
光源氏の子とされる薫(かおる)が美しい姉妹を垣間見て、姉の大君(おおいきみ)に強く心を惹かれるシーン!
薫(かおる)は仏門に深く帰依していた八の宮(はちのみや)の人柄や暮らしぶりに惹かれ、3年ほども宇治に通っていたのですが…
この垣間見をきっかけに、まさかの恋に悩む人生へ…!
そんな垣間見の重要性を考えると、「そこにもっと感情移入したい!」という気持ちになってきますよね~。
そんな方はぜひ「垣間見」体験を!
「御簾(みす)の向こう側が明るい時は垣間見できる!」「手前の方が明るいと見えにくい~(ってことは…逆に自分の姿が向こうに見えてる!)」
そんな楽しい発見があります!
「『源氏物語』でも突然、強い月明りが差してきて垣間見がひっくり返る描写がありますが、これを使えば分かりやすいんですよ」と鈴尾さん。
本当ですね!
実際の雰囲気を体感してからその場面を想像すると、「わわっ!月明りー!(あたふた…)」と、物語がよりリアルに感じられました。
考えてみると、夜も明るい現代では月明りを意識することってあまり無いかもしれません。
そんな違いも改めて実感できて、「より当時の感覚に近付けたかも!?」なんて嬉しくなりました!
それから…
「垣間見の原理は牛車にも見られるんですよ」と坪内さん。
外の方が明るいので、牛車の中から外が見えても、外からは中に乗っている人物が誰か分かりません。
「ところで牛車って、どうやって乗ると思いますか?」と鈴尾さん。
高さがあるから、う~ん…後ろにはしごをかけるとか?
答えは…
牛車は後ろから乗って、前から降りる!
(体の向きを変えなくて済む~。)
そして、建物につけて乗り降りすることも!
(地面に下りなくても良いなんて…さすがは貴族~。)
上の写真で轅(牛車の前方に出ている棒の部分)を支えている台がありますが、それを踏台にして降りるみたい!(うんしょっ。)
やっぱり実物の前で想像すると分かりやす~い!
行かれた方は、ぜひ平安時代の貴族になった気分でいろいろ想像してみて下さいね!
それでは(牛車に乗ってる気分で?)こちらの「架け橋」を渡って…
京の都から宇治まで移動します!
宇治十帖の登場人物も行き来していた、長~い道のり!
道中はどんなことを考えてたのかな~?
「宇治の間」は、お部屋全体で宇治十帖のストーリーを楽しめる体感型シアターになってました!
今スポットライトが当たっているのは、薫(かおる)と匂宮(におうのみや)です。
宇治川を中央に…
右岸(左手)には八の宮(はちのみや)邸があって、楽器を奏でる大君(おおいきみ)と中の君(なかのきみ)を、薫(かおる)が垣間見!
そして、左岸(右手)の方には匂宮(におうのみや)と浮舟(うきふね)が。
浮舟(うきふね)は、2人の男性から寄せられる愛に思い悩むことになります…。
なんだか贅沢な悩みにも思えますが、きっと本人からしたら毎日毎日、苦悩の日々…。
(とっても心配。どうなるの~!?)
こんな感じで登場人物と同じ空間で物語が進んでいくから、気付けば自分も物語の世界に迷い込んだ感覚に!
それにしても、やっぱり名作ってすごいですね~!
読み手によって色んな解釈が生まれるし、きっと平安時代の人たちも「私はこう思うけど?」「うそ~!」なんて盛り上がったんじゃないかな?って想像できます。
物語の終わり方も、その続きを読者の想像にまかせているように思えたり…
1つの答えがあるわけじゃないから、時代を超えて色んな分析や解釈がされているのかも!なんて色々考えたり。
余韻も長く楽しめるし、時間が経つと「今だとどう感じるか」を確かめたくて、また何度も読み返したくなりそうです。
そしてそして…
こちらのお部屋には「映像展示室」への入口もありましたよ!
こちら、ミュージアムオリジナルのアニメーション「GENJI FANTASY ネコが光源氏に恋をした」や、宇治十帖をテーマにした作品も楽しめるのでオススメです!
実際に「GENJI FANTASY ネコが光源氏に恋をした」を観てみましたが、とっても良かったですよ~!
ぜひ皆さんも御覧あれ!
「あ~、面白かった!」と作品を楽しんだら外へ出て、お次は「物語の間」へレッツ・ゴー!
まずは同じ香り・違う香りをかぎ分ける「源氏香」のコーナーへ!
目の前には5つの箱が。
香りの組み合わせは全部で52通りあって、『源氏物語』(全五十四帖)のうち五十二の巻名がそれぞれに付けられています。
『源氏物語』の中にも、香りにまつわる描写がたびたび登場。
ちなみに薫(かおる)は生まれつき体から得も言われぬ良い香りが漂っていて、匂宮(におうのみや)はそれに対抗すべく、いつも良い香りを焚きしめていたそうです。(名前を見ても面白いですね!)
こちらの体験コーナーでは、楽しく遊んでいるうちに自然と源氏香図(香りの組み合わせを表したマーク)に親しめます!
坪内さんによると、源氏香図は『源氏物語』をシンプルに象徴するもので、時々まちで見かけたり、器や着物にあしらわれていたりもするそうです!
だからこれ1つ知っているだけでも「あ、あれ源氏香図!」なんて普段の楽しみが広がるみたい!
こちらのミュージアムでも色んな所で見つけることができるので、ぜひ探してみて下さいね~。
見つけるといえば…
宇治十帖に『総角(あげまき)』の巻があるのですが、こちらの総角(あげまき)結びも、館内の色んな所で目にします。
(実はこの記事にも何度も出てきてます!)
他にも「物語の間」には「早わかり源氏物語」や…(個人的には『雲隠』の説明もしっかり読んでみてほしいです!)
「源氏物語の香り」のコーナー。
体を動かしながらいろいろ学べる「動く源氏物語」もありますよ!
そして館内には誰でも気軽に立ち寄れる「源氏物語に親しむコーナー」やオシャレな喫茶・ショップもあったり、企画展示室や講座室で色んな催しが開催されたり…
本格的な図書室まであるんですよ!
『源氏物語』に関連する色んな書籍や漫画などがあって、『源氏物語』初心者の方から詳しい方まで老若男女が楽しめそう!
「色んな作家さんが『源氏物語』を現代語に翻訳されているので、ぜひ自分好みの本を見つけて読んでみて下さいね」と鈴尾さん。
多くの方が翻訳されていることからも、その名作ぶりがうかがえますね~。
そして最後に…
今回色々お話をうかがった中で、坪内さんから「古典などの教養は裏切らない」という言葉がありました。
学んですぐに何かが起こるものではないけれど、長いスパンで見た時に「考え方の1つの指針となる」ということです。
個人的にも、『源氏物語』で感じたことの1つに「人間って矛盾をかかえた生き物だなあ~(でも人間らしくて面白い!)」なんてことがあって…
自分自身もまったく完璧ではないし、いろいろ考えたり悩むこともある中で「そういった学びから少しでもヒントを得られれば!」なんて思いました。
そして「また時々こちらのミュージアムを訪れて、知識をどんどん重ねていこう!」と、楽しみが増えた日でもありました。(ワクワク!)
何でも感じ方は人それぞれ。
皆さんはこちらのミュージアムを訪れて、どのようなことを感じられるでしょうか?
ぜひご自身で体感してみて下さいね!
宇治市源氏物語ミュージアム 施設概要
住所 京都府宇治市宇治東内45-26
開館時間 9:00~17:00(最終入館 16:30)
休館日 月曜日
※祝日の場合は営業・翌日休館(年末年始は休館)
観覧料 大人 600円/小人 300円
※団体割引あり(20名以上)
駐車場 あり(有料)
喫茶・ショップ あり
(施設概要は2024年3月6日時点のものです。)
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