ALCOグルメは記者が行った飲食店を紹介するコーナーです。
今回は2020年2月16日(日)、宇治橋通り商店街「大阪屋マーケット」内で移転オープンした珈琲屋さん「noccas wion / ノケイズウィオン」を取材させていただきました。
(価格、メニューの内容等については2020年2月16日時点のものです。)
目次
アクセス
(京都府宇治市宇治妙楽41 大阪屋マーケット内)
行き方は次のとおり
JR宇治駅から「中村藤吉」さんの方に向かって左折。
「宇治橋通り商店街」を宇治川方面へしばらく進むと、右手に「大阪屋マーケット」があります。
「ノケイズウィオン」に新しく
現在改装中の「大阪屋マーケット」はノケイズウィオンの店主、田辺さんの曽祖父様が屋台からお店を始められ、祖父様の代で建物を建てられ、お父様の代で維持してこられた代々伝わる建物です。
田辺さんご自身も色々と悩まれた結果、周囲の後押しもあり、今回改装に踏み切られました。そしてマーケット内には2019年11月にピッツェリアが出来、2020年2月15日には整体院がプレオープンしたばかり。今後さらに様々な店舗が入る予定です。
11年間マーケットの入り口でお客様を迎え続けてきたノケイズウィオンは、今回マーケットの中ほどへ移転。ご自身で塗られた壁に、むき出しのガス管。これまでマーケット内で営んでこられた魚屋さんのレトロな照明を譲り受け、スタイリッシュな新しさの中にも歴史が息づく空間に生まれ変わりました。
今回の取材の中で、田辺さんがお客さんやご家族、周りの方をとても大切にされている事が伝わってきました。それだけに改装や移転にともなう葛藤もあり、けれどご自身の決断を前向きに捉えておられるとも感じます。
その姿勢はまさに、店名の「noccas wion / ノケイズウィオン」に表れているのかもしれません。
「now(今)」と「occasion(機会)」を掛け合わせたオリジナルの言葉、つまりは「今この機会」を大切に―。
珈琲屋さんを始められた時も、それまで石橋を叩いて渡ってきたけれど、その時ばかりはタイミングをつかんでスタートされたそうです。
ご自身も観光地を訪れるのが好きで、「旅先にこんなお店があったら」と思う、ふらっと寄れてテイクアウト出来る、美味しい珈琲屋さんを目指して始められました。
そしてお客さんにも「今この機会」でお店に立ち寄っていただければ―。
お店をやっていると、通り過ぎていく人がたくさんいる中でふと「立ち寄ってみよう」という人もいる。そんな「今この機会」に訪れる楽しい出会いが、コーヒーのあるワンシーンをより特別な物にしてくれるのかもしれません。「ノケイズウィオン」、いい言葉ですね。
エスプレッソの本場、イタリアからもお墨付き
メニューはこだわりのドリップコーヒーからキャラメルマキアート、宇治抹茶をその場で点てる本格的な抹茶オーレまで様々なラインナップ。ストレートの豆はその時々で変わります。コーヒーのお供には自家製ワッフルをどうぞ。
ブレンドは5種類。全てオリジナルで、味がぼやけないよう「主」となる豆を決め、3~4種類の豆を異なった配合でブレンドしておられるそう。
苦み、酸味、香りのバランスが良いものをと、店主自ら一日何百杯も飲んで試行錯誤し出来上がったものがブレンドA。こちらは酸味によって香り高さを感じる事ができますが、酸味が苦手な方の為に、と作られたブレンドBもあります。こちらは苦みを楽しめるコーヒーで、この2種類はほとんど常に置いておられるそうです。
ブレンドA(ドリップコーヒー/350円 税込)をいただいてみると、心地よい酸味や苦み、奥深い香りなど、様々な風味がバランス良く賑やかに感じられました。まるで色とりどりの花が一気にぱっと咲いたよう。しかもマイルドですっきりと飲みやすく、香りの余韻を長く楽しめました。冷めてもまろやかで、香りも豊か。とても美味しかったです。
カプチーノ(320円 税込)はミルクの泡(ミルクフォーム)がものすごくなめらかで、口にした瞬間、ふんわりと優しさに包まれました。ミルクのコクと甘みが深みのあるコーヒーと出会い、何とも幸せな気分。泡だけすくって口へ運ぶと、なめらかでふわふわとした食感がよりしっかりと感じられました。
ミルクは蒸気で温める時、空気とうまく混ざり合うと甘みが増すそうです。薄いカップで飲むと、さらに空気と混ざりやすいそう。泡だけを見てみるとなめらかな光沢がありましたが、これも良い泡の条件だそうです。
さて、エスプレッソはコーヒーの旨味などが濃縮され誤魔化しがきかないそうですが、そんなエスプレッソ目当てに、宇治へ来る度こちらのお店へ立ち寄るイタリア人の方がおられるそうです。旅の通訳をされている方で、もう何年も通っておられるとのこと。さらにお隣のピッツェリアの窯を造りにイタリアから来られた職人の方々も、その美味しさに納得。これは「本場イタリアの方からお墨付きをいただいた」と言っても良いのではないでしょうか。
一杯のコーヒーに詰まったオリジナリティとこだわり
イタリアの方からも認められるほど、美味しいコーヒー。ところが驚くべき事に、田辺さんはコーヒーについて、ほぼ我流で学んでこられたそうです。
「コーヒーって見た目は同じように見えますが、色んな人が作って、色んな形があって…そんな中で自分色を出したいんです。」
そんな田辺さんの願いはどこかアーティスティックでもあり、実験やデータに基づいた判断は科学的でもあります。自家焙煎を初めて以来、何と天候、気温、湿度といったデータをずっと取り続けておられるとのこと、そしてそんな地道な経験から見えてくる事があるようです。
特に湿度は出来具合をかなり左右すると考え、焙煎器にカバーを掛けて調整したり、さらにベストな温度で提供できるよう、気温も計算に入れて調整したりと色々工夫を凝らします。
田辺さんのコーヒーには、独自に学びゼロから様々な事を試してきた経験、つまりオリジナリティとこだわりが詰まっているのです。
目指したのは冷めても美味しいコーヒー、そして飲みごたえはありつつ喉をスッと通り、後味すっきりなコーヒー。
「せっかくコーヒーを飲んでいただいたのだから、最後に水を飲むのではなくコーヒーで終わって、香りの余韻も楽しんでいただきたい。」そんな思いから、ドリッパーもスッキリと仕上げるのに相性の良い物を選択。
生豆はオールドクロップ(古い豆)だと火が通りやすいけれど、豆の芯から火を通したい、と水分量の多いニュークロップ(新しい豆)を使用。
一粒ずつ欠点のある豆を取り除く「ハンドピック」のこだわりも譲れません。一粒ひとつぶ豆を弾いて回転させながら、カビ、虫食い、ヒビ、欠け、死豆といった色んな要素をチェックしていく様はまさに、職人技。こちらの写真で約40g、焙煎で約1割減る事を考慮すると、最終的には2杯強にしかならないそうです。
ハンドピックは焙煎後にも行い、欠けなどB級のものをチェックします。こんな風に時間と手間を掛けて出来上がる一杯のコーヒー、有り難い気持ちでいただかなくてはいけませんね。
そしてハンドピックと並んでもう1点重要なのが、焙煎日だそう。自家焙煎で鮮度にこだわりのあるこちらのお店、もちろん劣化した豆は使用しません。お湯を注ぐとしっかり膨らむのが美味しいサイン。新しい豆にはガスが多く含まれている為、このように膨らむそうです。(焙煎直後はガスが多すぎるので焙煎日から2日後くらいがベストだそう。)
焙煎器は電気、ガスの両方を試した結果、しっかりパチパチ豆がはぜ、火の通りが良いと感じた直火のガスを採用。ムラなく芯から火が通るよう、焙煎器にカバーをしてしっかりと余熱を行います。
淹れ方は贅沢に1杯15gの豆を使用し、注文を受けてから丁寧に挽いて淹れていただけます。少し時間が掛かりますが、その分美味しいコーヒーが味わえます。
豆の販売は基本的には事前注文となっていますが、こちらにも田辺さんならではのこだわりがあります。焙煎した豆は時間とともに劣化していき、売れ残りは廃棄しなければなりません。事前注文の形をとると豆を廃棄せずに済み、その分安くで提供できて無駄もなく、さらにお客さんはその場ですぐ梱包済みの豆を受け取れて、何より新鮮な豆を楽しめる、という訳です。
さてさて、ここまで読んでいただいた方の中にはこちらのお店に興味を持たれた方もおられるかもしれませんね。そんな方は「ノケイズウィオン(今この機会)」に足を運んでみてはいかがでしょうか。ぜひ、素敵なひと時をお過ごしください。
noccas wion / ノケイズウィオン 店舗情報
- 住所 京都府宇治市宇治妙楽41 大阪屋マーケット内
- 定休日 不定休
※マーケット最奥「のままに店」は月・火が定休日 - 営業時間 11:00~17:00(月曜日のみ 14:00~19:00)
※マーケット最奥「のままに店」は 14:00~18:00 - 近隣にコインパーキング有
- 禁煙
- ベビーカー・車いすでの来店OK
- 「キャッシュレス・ポイント還元事業」対象店(PayPay)
- 定休日などはInstagramでチェック⇒こちら
- (店舗情報は2022年4月14日時点のものです。)