2021年3月10日(水)、「京都伝統産業ミュージアム」(京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9-1)をメイン会場(※)に、「KYOTO KOUGEI WEEK」実行委員会主催の「Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE +」がスタートした。
※一般入場は12日(金)~14日(日)のみ
「DIALOGUE」は2018年から始まった展示販売会で、バイヤーが訪れる他、一般入場が可能な日も設けられている。会場には伝統を背景にもつ多種多様な工芸品が集まり、伝統と新しさの融合を目にする事が出来る。
そんな「DIALOGUE」だが、今年はさらに内容を広げ「DIALOGUE +」として特別企画を実施している。メイン会場の他、「ホテル カンラ京都」「HAMACHO HOTEL TOKYO」「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」での特別展示も同時開催。「ビームス ジャパン 京都」「D&DEPARTMENT KYOTO」「FabCafe Kyoto」「QUESTION(河原町御池)」「Community Store TO SEE」「VOU / 棒」をサテライト会場にした連携企画も既に始まっている。
その中から今回は、メイン会場「京都伝統産業ミュージアム」での様子をお伝えしよう。
早速会場へ向かったところ、受付に辿り着く前に早くも驚かされる事になった。こちらは鏡師 山本 晃久氏。鏡に光を反射させると、鏡の裏面に描かれた模様が壁に投影される。それだけでも驚きなのだが、何とその昔、隠れキリシタンの人々がキリストを鏡の中に隠す事が出来たという。鏡面の裏面にはキリストを描き、そこへ更に蓋をする様に松や鶴を描いたカモフラージュを取り付けるのだ。
発想力の凄さと、鏡を極限まで薄く削る職人技術。これまで自分が持っていた「鏡」の概念が覆された気分だ。
そんな驚きの余韻とともに、会場の中へと足を踏み入れる。
すると、色鮮やかな色彩と繊細で美しい模様が目を引いた。デジタル技術を木工に応用し、京友禅模様を施した「Sansai」だ。女性漆職人の手によって藍、紅殻、墨などの天然染料、そして京友禅の染色技術が活かされている。
一方こちらは「我戸幹男商店」。漆黒の美しさと巧緻を極めたフォルムに目が釘付けになる。伝統を踏まえつつ現代に寄り添ったデザイン。漆器の黒の深さは今も昔も人々の心を魅了してやまない。
そして、「輪島キリモト」の漆器にはインパクトが有った。一度見ると忘れられない作品。同じ漆器でもここまで違う魅力があるとは面白い。
他の作品にも言える事だが、芸術と日常の狭間に位置するそれぞれの作品をいかに自分のライフスタイルに取り入れるか、というところにも様々な可能性を感じてまた愉しい。
こちらの「nobegane」は西陣織の引箔の伝統技法を応用し、帯地の煌びやかさを箸に表現している。この「箔」は「箔がつく」という表現の語源とも言われているそうで、何とも縁起が良さそうだ。
こちらは家具鞄、という新発想の「家具鞄 KAGUKA」。その名の通り、家具屋が作った木製の鞄だ。スマホやタブレットの普及により何でも持ち運べる時代。しかし家具やくつろぎの空間までいとも簡単に持ち運べるとは、デジタルでない世界も捨てた物では無いと思わせてくれる。
そして今回も山城地域からの出店が見られた。こちらは木津川市の「宇治香園」。江戸時代から続く会社だ。「さくら花茶」「水出しもも緑茶」などのフレーバーがあり、若者がお茶の魅力を再発見する機会になるのではないかと感じる。
こちらは京都宇治でおりんを製造している有限会社南條工房の「LinNe」。常に新たな可能性を探る「LinNe」の新たな試みは想像を超えていた。ターンテーブルが回ると上から吊るした錘が次々に当たり、音色を奏でる。次にどのような音が来るのか、予測不可能な面白さがあった。
伝統と革新に溢れた「Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE +」。驚き、発見、楽しさ、面白さ。そして職人の手仕事への熱意に心動かされる体験だった。この様なクリエイティブな人々の出逢いの場が、また更に新たな可能性を生むのかもしれない。