「寶屋」が50年以上の歴史に幕。人々の思い出が詰まったまちの酒屋さん。【京都府宇治市】

2021年3月31日(水)をもって、京都府宇治市「宇治橋通り商店街」の「寶屋」さんが営業を終了されます。

創業1970年。実に50年以上の歴史があるまちの酒屋さんです。店内では立ち飲みができ、「ちょっと一杯」と人々の交流の場にもなっています。

「宝屋」外観画像1

今回店主の宝田さんにお話をうかがったのですが、笑顔が素敵で優しくて、誰からも愛されそうなお人柄。お話を聞いているだけで「こういう場所に人が集まるんだなあ」と感じ入ってしまいました。

店主の宝田さん
音楽活動をされている宝田さん。音楽のある酒屋さんなんて素敵!

現在のお店は今から約100年ほど前に創業された「石井食料品店」さんから引き継がれたそうです。建物自体は明治後期~大正初期の物だと考えられていて、老朽化が進み改修工事をするにも費用が掛かりすぎる為、今回やむを得ず取り壊す事に。宝田さんの「建物は残したかったけれど…」という言葉の重みはとても推し量る事ができません。

昔の画像
「石井食料品店」さん(写真は宝田さん提供)
現在の「宝屋」外観画像
現在の「寶屋」さん

今ではちょっと珍しい「酒屋さんで立ち飲み」というのは、昔ながらの営業スタイルだそう。昔よく行われていた量り売りの延長で、ただ販売するのではなくお店に立ち寄ってくれたお客さんに「まあ一杯飲んで行きなよ」と振る舞う温かい光景が、かつてはよく見られたそうです。料金は「コップ洗い分」ほどしか上乗せせず、純粋に人と人との交流を楽しむ場だったようです。

昔の色んなお話を聞いていると、頭の中で想像が膨らんでいきます。

「昔はここの商店街に映画館があってね…」「1970年代の商店街は毎日お祭りのような賑わいで、ビールが山の様に売れたんですよ」「ここで3人ほどでおでんを作っていた頃もあったなあ…」「そうそう。周辺の企業のお偉いさんが部下の方などを連れて毎日のように来られたりしてね…」

SNSで気軽に色んな人とつながりあえる今の時代も良いけれど、どこか温かいノスタルジックな風景が頭の中を駆け巡り、心をぎゅっとつかんで離しません。

最後に、現在の店内のお写真を撮影させていただきました。

店内画像1
写真右側に写っているのは立ち飲みのカウンター
店内画像2
味のある字体など、どこを見ても良い雰囲気
店内画像3
古い建物である事が分かる天井部分(お店の奥)

「寶屋」さんの閉店を惜しむ方は多いと思いますが、宝田さんご自身の地域活動や音楽活動は今後も続けられるそうなので、今後もまちのイベントなどでお見掛けすると思います。

そして「寶屋」さんでの思い出は、きっと皆さんの心の中で輝き続けるのではないでしょうか。

 

寶屋 店舗情報

住所 京都府宇治市宇治壱番16
現在の営業時間 9:30~20:00 ※立ち飲みは17:00~20:00
※3月28日(日)はお休み
2021年3月31日(水)閉店予定