南山城最大級の古墳時代の溝、日本最古級の導水施設が発掘されました!【京都府城陽市・小樋尻(こひじり)遺跡】

京都府城陽市の「小樋尻(こひじり)遺跡」で、南山城最大級の古墳時代の溝が確認されました!

 

「小樋尻(こひじり)遺跡」の発掘調査は平成29年度から行われてきていますが、これまでにも縄文時代の竪穴建物、弥生時代~古墳時代の溝、古墳時代の溝・竪穴建物、奈良時代の掘立(ほったて)柱建物、中世の島畑などが見つかっています。

今回見つかったのは古墳時代前期(3世紀後半)の流路と、それが洪水で埋まってしまったものの、時が経ちふたたび古墳時代後期に掘られて奈良時代まで使われていたという人工的な溝(6~8世紀)です。

「昔の流路が埋まって、その後にまた堀って使われていた!」というところが大きな特徴のひとつになります。

小樋尻写真キャプション入り
写真は「公益財団法人京都府埋蔵文化財調査研究センター」提供

場所は城陽市富野久保田。宇治丘陵から流れてくる地下水が豊富な立地です。

『日本書紀』では、この辺りの古代の地名「栗隈(くりくま)」とともに「大溝(おおうなで)を掘る」「田に潤(つ)く」などの記載が2度もあるという事です!

流路の画像

古墳時代前期にもともとあった流路は幅約25メートル、深さ約2.7メートル。

縄文・弥生時代からあった自然の流路に一部人の手を加えたもので、木材を杭で固定して水流を調整する仕組みと導水施設がそこから見つかりました。

導水施設の画像
導水設備

導水施設の目的は、祭祀を執り行う際に必要な清浄な水を得ることだと考えられています。

堰板(せきいた)を使って水を溜め、上澄みの水だけを木樋(もくひ)に流す仕組みです。

横からみた導入施設

導水施設にはそこに被さるような形で樹皮が見つかっていて、樹皮が目隠しの役割をしていた可能性があるようです。

このような導水施設が見つかったのは「浅後谷南遺跡」(京丹後市)、「瓦谷遺跡」(木津川市)に次いで京都府で3例目。

そして「延永(のぶなが)ヤヨミ園遺跡」(福岡県行橋市)と並ぶ日本最古級のものだそうです!

鍬などの画像

流路からは鍬(くわ)、鋤(すき)などの木製の農具や、たくさんの土器が見つかりました。

稲の豊作などを願う祭祀だったのかもしれません。

なすび型の鍬は、別の木にくくり付けて使用されていたようです。従来の物よりも軽くて使いやすいという事で、この時代に流行った形のようです。

勾玉の画像

漆塗りの盾や琴、勾玉なども出土!これには重要な意味があるようです。

例えばこのような水辺の祭祀では「盾で邪悪なものを防御する」という思想があったと考えられていて、導水施設と盾が一緒に見つかった事で「やっぱり!」という事になります。

作業風景の画像

ふたたび古墳時代後期に掘られた溝は、幅約11メートル、深さ約1.8メートル。灌漑用水路として使われた可能性があります。

比較的直線的な形で掘られていて、底部の両側は人工的に造成。土の下層には「敷葉(しきば)工法」という草本類を敷いて土を強化する高度な土木技術が用いられていたようです!

また、木材を溝に直交するかたちで置かれた堰(せき)も見つかっていて、水位の調整が行われていたと思われます。

さらにこの溝は何度も埋もれたものの再掘削して維持管理され、古墳時代後期~奈良時代にかけて使われていた珍しい例のようです。

斎串、人形などの画像

奈良時代の堆積層からは祭祀に関係する木製の斎串(いぐし)と人形(ひとがた)が見つかりました。

発掘作業の画像1

平城京など限られた場所でしか行われない律令祭祀がこの場所で行われたという重要な痕跡でもあり、貴重な発見。

発掘作業の画像2

この地域では古墳時代前期に造営が始まった「久津川古墳群」、居館とされる方形区画が見つかった「森山遺跡」、飛鳥・奈良時代の久世郡衙(役所)と推定される「正道官衙(しょうどうかんが)遺跡」もあります。

各時代にこの場所で有力な地域勢力が存在したという事で、「きっと色んなストーリーがあったんだろうな~」と想像が膨らみます!

さて、最後になりましたが発掘作業を行っておられる方の声もご紹介させて下さい。

「最初は一箇所から木が見つかったところから始まり、だんだん大きな形が見えてきました。発掘を進めるうちに『当時の人達はこんな風に掘ったのか!』と思ったり、色んな土器もたくさん出てきて本当にワクワクする体験です!」

とっても楽しそう!

そんな「小樋尻遺跡」の詳細は、11月18日以降に京都府埋蔵文化財調査研究センターHP(こちら)でアップされる予定ですので、興味のある方は是非ご覧くださいね!

「小樋尻遺跡」の画像

 

小樋尻遺跡 第10・11次調査 調査概要

  • 目的 新名神高速道路整備事業、国道24号寺田拡幅事業に伴う発掘調査
  • 場所 京都府城陽市富野久保田
  • 期間 2020年4月下旬~2021年2月末(予定)
  • 調査機関 公益財団法人京都府埋蔵文化財調査研究センター

 

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